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ガイドラインの目的

出生前診断の考え方
ガイドラインを策定する中で出生前診断の考え方について、時間を費やして議論しました。出生前診断に関連した病気でのガイドラインはこれまでにありませんでした。その背景には、「出生前診断は病気の胎児を排除するもの」と、患者さんの団体からは反発が強く、議論が避けられてきた歴史があります。なかでも、積極的に羊水検査を行い、染色体異常児を早期に診断し生まないことを勧めた兵庫県の『不幸な子供を生まない』運動は、当然のことながら、障害者団体の強い批判にあい、数年で取り下げられています。


出生前診断で早期発見するメリット
一方では、妊娠後期に入って水頭症の診断で私たちのところにきた家族が、「もっと早く見つからなかったのか、早く見つかれば何とかできたのに」と口にすることもあります わが国の母体保護法は、胎児の疾患によって妊娠を中絶することを認めてはいません。水頭症の場合、妊娠22週未満に診断されることは疫学調査の結果では5%と決して多くはありません。しかし診断技術はどんどん向上し、より早期に『脳室拡大の疑い』が診断されるようになることは明らかです。
超音波診断機器によって、胎児に疾患が見つかる可能性についても、両親に、充分に説明したうえで実施されなければいけないものですが、何の心構えもなく、なんとなく検査を受けているというのが現状です。
私自身、出生前診断は単に病気のこどもを排除するためだけのものではないことを、これまでの経験の中で実感してきました。病気をもちながら、育っていく子どもや家族は、様々なことを教えてくれました。
一人目のお子さんが水頭症で、次子を妊娠されたとき、『次の子も同じ病気でも全然大丈夫。だって○○はこんなにかわいいもん。』とおっしゃったお母さんもいました。 


できるだけ正確な情報と支援する体制を
胎児期水頭症を治療する立場にいる小児脳神経外科医達は、水頭症の子どもや親と、成育上の多くの問題で長い関わりをもちます。確かに子どもに対する親の気持ち、と一口に言っても千差万別です。母親と父親でも違うし、それぞれ人生観、価値観、病気に対する考え、経済的状況、家庭環境での精神的肉体的余裕も違います。お腹にいる子供が胎児期水頭症と診断されたとき、医師である私がしないといけないことは、私の価値観を押し付けることではなく、胎児の状態をより正確に考えられる為の情報を提供することだと思っています。
現実は不正確な情報や「“かもしれない”診断」によって過度の不安をもたらし、医師の説明で必要以上に打ちのめされたり、わからないと放置されたり、不用意な妊娠中絶を勧められたりということもあります。胎児期水頭症の出生前診断に今一番必要なことは、まず両親が、胎児の今の状況・これからのこと・将来の姿などをしっかり捉えられる充分な情報です。そして単にその情報が提供されるということだけではなく、両親と共に、これから起こることを一緒になって考えてくれるような、心理サポートや支援の体制です。両親は、はじめは驚き、嘆き、自らを責め、戸惑い、といった紆余曲折を経ながら、現実を受け入れ、勇気をもって出産にのぞんでいきます。あるいは、覚悟した別の決断もあるでしょう。
そのためにまず水頭症の胎児診断が行われてきたこの20年間のデーターを整理して正しい情報を伝えることから始めることが重要です。このような願いを持って、胎児診断の最前線にいる医師を対象に、患児の診断と治療、そして両親や家族への援助のための手引きになることを目指して、『胎児期水頭症診断と治療ガイドライン(金芳堂、2005年、3800円)』を作成しました。

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